構造生物学:INO80複合体によるATP依存性クロマチンリモデリングの構造基盤
Nature 556, 7701 doi: 10.1038/s41586-018-0029-y
真核細胞の核では、DNAがヌクレオソームの形でパッケージングされていて、個々のヌクレオソームはヒストンタンパク質八量体の周りに巻き付いたほぼ147塩基対のDNAからなる。ヌクレオソームの位置とヒストン構成は、15のサブユニットからなるINO80複合体のような、ATP依存性のクロマチンリモデリング複合体によって決められる。INO80は、遺伝子発現、DNAの修復や複製を、ヌクレオソームのすべり移動、ヒストンH2A.ZとH2Aの交換やプロモーターDNA上での+1と−1のヌクレオソームのポジショニングによって調節している。これらのリモデリング反応の構造や機能は現在のところ分かっていない。今回我々はクライオ(極低温)電子顕微鏡を用いて、好熱性真菌Chaetomium thermophilum由来のINO80複合体の進化的に保存されたコアについて、ヌクレオソームに結合した状態の構造を、全体分解能は4.3 Å、主要な部分の分解能は3.7 Åで解いた。INO80コアは、ヌクレオソームの完全な一巻き分を、DNAとヒストンの間の複数の接触により抱え込んでいる。Rvb1/Rvb2のAAA+ ATPアーゼヘテロ六量体は複合体集合用の足場であり、モーターの「固定子」やヌクレオソームをしっかりつかむサブユニットとして働いている。Swi2/Snf2 ATPアーゼのモーターは、ヌクレオソームDNAの超らせん部位(SHL)−6に結合し、約15塩基対をほどいてH2A–DNA間の接触を破壊し、entry DNAをヌクレオソームに送り込む態勢を取っている。Arp5とIes6はSHL−2とSHL−3に結合し、H2A–H2B二量体上の反対側の端でモーターの逆側のグリップとして働いている。Arp5のinsertionドメインは、引っかけかぎのような構造要素となってヌクレオソームdyadに結合し、約90 Åの距離を越えてArp5のアクチン様折りたたみ部分とentry DNAを結び付け、「酸性パッチ」近傍でヒストンH2A–H2Bに近寄るように詰め込んでいる。我々の構造は、生化学データと共に、ヌクレオソームのすべりとヒストン編集がINO80によって統合的に行われる機構を示唆している。モーターは巨大分子ラチェットの一部となっていて、entry DNAをH2A–H2B二量体を越えてArp5グリップに向かって連続的に移動させ、その結果ヌクレオソームの大規模な移動という段階が起こる。モーター活性によってH2A–H2Bが一過的に露出することと、H2A.ZとH2Aが区別されることが、ヒストン交換を制御しているのかもしれない。

