物性物理学:魔法角グラフェン超格子における非従来型超伝導
Nature 556, 7699 doi: 10.1038/nature26160
強相関物質、特に非従来型超伝導体の挙動は、数十年にわたって広く研究されてきたが、まだ十分に理解されていない。理論的理解がこのように不十分であることが動機付けとなって、そうした挙動を研究する実験的手法、例えば極低温原子格子を用いる量子物質のシミュレーションが開発されてきた。今回我々は、2枚のグラフェンシートを相対的に小角度だけねじって積層することによって作製した二次元超格子において、弱い電子–フォノン相互作用では説明できない、本質的に非従来型の超伝導を実現したことを報告する。ねじれ角が約1.1°(第一の「魔法」角)の場合、この「ねじれ2層グラフェン」の電子バンド構造は、ゼロフェルミエネルギー付近で平坦なバンドを示すため、半充填で相関絶縁状態となる。この相関絶縁状態から離れる方向にねじれ2層グラフェンに静電ドーピングを行ったところ、臨界温度1.7 K以下で調節可能なゼロ抵抗状態が観測された。ねじれ2層グラフェンの温度–キャリア密度相図は、銅酸化物(またはクプラート)のものに似ており、超伝導に相当するドーム形状の領域を持っている。さらに、この物質の縦抵抗の量子振動は、アンダードープクプラートと同様に、相関絶縁状態付近に小さなフェルミ面が存在することを示している。そうした小さなフェルミ面(キャリア密度約1011 cm−2に相当する)を考慮すると、ねじれ2層グラフェンは、超伝導臨界温度が比較的高いことから、電子間の対形成が最も強い超伝導体の部類に入る。ねじれ2層グラフェンは、精密に調節可能な純炭素系の二次元超伝導体であり、従って、強相関現象の研究に理想的な物質で、そうした研究から高臨界温度超伝導体や量子スピン液体の物理に関する知見が得られる可能性がある。

