材料科学:分子核形成機構および結晶多形選択のための制御戦略
Nature 556, 7699 doi: 10.1038/nature25971
凝縮(圧縮)タンパク質相の形成は、白内障、筋萎縮性側索硬化症、鎌状赤血球貧血、アルツハイマー病など、ヒトのさまざまな疾患と関係している。しかし、凝縮タンパク質相には使い道があり、こうしたタンパク質相は、結晶として、構造生物学ではタンパク質構造の解明のために利用され、医薬応用においては送達担体に使われている。結晶の生理化学的性質は、同一高分子でも形態や構造(「多形」)の違いによって大幅に異なる可能性があり、科学関連や工業関連での有用性を左右する。出現しつつある多形を制御するには、さまざまな巨視的状態につながる経路や、経路の選択に影響を及ぼす機構を分子レベルで理解する必要がある。しかし、高分子相の初期核が形成される仕組みや、こうした核が多形選択に影響を及ぼす仕組みはまだ明らかになっていない。今回我々は、時間分解極低温(クライオ)透過型電子顕微鏡法を用いて、グルコースイソメラーゼというタンパク質の結晶の核形成を画像化し、2つの結晶状態と1つのゲル状態につながる核形成経路を分子分解能で明らかにする。多形選択が構造形成の最初期段階で起こり、各空間群に特有の構成要素に基づくことが分かった。さらに我々は、分子間結合を特異的に調節する部位特異的変異導入やゲルシーディングを通して望み通りの多形を選択的に形成することによって、この系の制御を実証する。今回の結果は、結晶状態の前駆体として準安定高密度液体を特定していないという点で、現行のタンパク質核形成の描像と異なる。むしろ我々は、すでにある程度の結晶性を示している臨界前クラスターの指向性連結によって駆動される核形成事象を観察した。今回の知見は、高分子の相転移を制御する方法を示唆しており、タンパク質系薬物送達システムの開発や高分子結晶学に役立つ。

