生物学的技術:単一細胞塩基配列解読法を用いた個体全体でのクローン追跡
Nature 556, 7699 doi: 10.1038/nature25969
胚発生は多細胞生物の一生における重要な時期で、この間に、限られた数の胚の前駆細胞から成体の全細胞が作り出される。これらの前駆細胞が成体組織でどの運命を獲得するかを調べるには、単一細胞の分解能でのクローン履歴と細胞のアイデンティティーの同時測定が必要だが、これまでこれは大きな難題となっていた。従来、クローン履歴は、顕微鏡による発生中の細胞の追跡や、遺伝的にコードされた蛍光タンパク質の遺伝性発現の観察、さらに最近では、体細胞変異、マイクロサテライト不安定性、トランスポゾンのタグ付け、ウイルスのバーコーディング、CRISPR–Cas9ゲノム編集、Cre–loxP組換えを利用した次世代塩基配列解読技術を用いて調べられてきた。単一細胞トランスクリプトミクスは偏りのない細胞タイプ分類のための強力なプラットフォームを提供する。今回我々は、成体ゼブラフィッシュの異なる器官から得た数千個の細胞のクローン履歴と細胞タイプを同時に定量化できる単一細胞塩基配列解読戦略、ScarTraceについて報告する。我々はScarTraceを用い、多能性胚性前駆細胞の小集団から腎臓の髄質で全ての造血細胞が作られること、そして多くの前駆細胞から眼や脳で特定の細胞タイプが生じることを示す。加えて、胚性前駆細胞が左眼あるいは右眼に拘束される時期を調べた。ScarTraceにより、尾鰭の表皮細胞および間葉系細胞は同一の前駆細胞から生じ、骨芽細胞に限定された前駆細胞は再生の際には間葉系細胞を作り出せることが明らかになった。さらに、他の血液細胞タイプとはクローンの起源が異なる常在免疫細胞が鰭に存在することを見いだした。同様の手法は他の実験系でも大いに役立つと考えられ、そうした実験系で、胚でのクローンの起源を成体の細胞タイプに一致させることにより、最終的に、成体の体が単一の細胞から組み立てられる仕組みを再構築できるであろう。

