炎症:NR5A2による転写調節が膵臓の分化と炎症を結び付ける
Nature 554, 7693 doi: 10.1038/nature25751
慢性炎症は、いくつかのタイプのがんの発生リスクを上昇させる。現在のところ、炎症応答は細胞分化に関わるものとは別の転写ネットワークに基づく機構により制御されると考えられている。オーファン核内受容体NR5A2は、肝臓でのコレステロール代謝やグルコース代謝、小胞体ストレスの解消、腸管でのグルココルチコイド産生、膵臓の発生、腺房の分化など、多様な過程に関わっている。以前のゲノム規模関連研究で、NR5A2遺伝子周辺の一塩基多型が、膵管腺がんのリスクと関連することが明らかになっている。マウスでは、Nr5a2のヘテロ接合が膵臓の損傷感受性を高め、再生を阻害し、腫瘍のプログレッション時には変異型Krasと協同する。今回我々は、包括的なトランスクリプトーム解析を行い、Nr5a2+/−マウスの膵臓には、基底状態で上皮細胞自律的な前炎症状態が見られ、この状態は膵炎が誘発する炎症の初期段階に似ていて、組織学的には正常だがNR5A2 mRNAの発現が減少したヒト膵臓でも同様に見られることを明らかにする。Nr5a2+/−マウスでは、NR5A2による転写は著しく切り換わっており、NR5A2は分化特異的遺伝子から炎症関連遺伝子へと再配置されて、AP-1転写因子に依存した遺伝子転写を促進する。膵臓でJunを欠失させると、この前炎症性表現型が救済され、NR5A2の炎症関連遺伝子プロモーターへの結合や、損傷に対する再生応答の異常も起こらなくなる。これらの知見から、膵臓では、分化特異的な機能に関わる転写ネットワークが、炎症性プログラムの抑制も行うという見方が裏付けられた。遺伝的あるいは環境的制約の下で、これらのネットワークが破綻して炎症を促す可能性がある。

