ナノスケール材料:多結晶単層二硫化モリブデンから作製される多端子メモトランジスター
Nature 554, 7693 doi: 10.1038/nature25747
メモリスターは、不揮発性抵抗変化型メモリー用に開発された二端子受動回路素子であり、神経形態学的コンピューティングにも役立つ可能性がある。メモリスターは、フラッシュメモリーよりもエンデュランスが優れており、読み出し/書き込みが速い上、多ビットデータ記憶が可能である。しかし、二端子メモリスターはニューロンの基本的機能に対して能力が実証されているものの、ヒトの脳のシナプスの数はニューロンの1000倍以上である。これは、ヘテロシナプス可塑性などの複雑な機能を実行するには、多端子メモリスターが必要であることを示唆している。三端子Widrow–Hoffメモリスター、ナノイオンゲートやフローティングゲートを備えた電界効果トランジスターなど、二端子メモリスターを超えようとするこれまでの試みでは、トランジスターにおける記憶抵抗スイッチングが実現されていなかった。今回我々は、スケーラブルな作製プロセスで多結晶単層二硫化モリブデン(MoS2)を用いて、メモリスターとトランジスターの多端子ハイブリッド(すなわち、メモトランジスター)を実験的に実現したことを報告する。この二次元MoS2メモトランジスターは、高いスイッチング比、優れたサイクルエンデュランス、長期の状態保持の他に、各抵抗状態において4桁のゲート制御性を示す。六端子MoS2メモトランジスターは、従来の長期増強/抑圧のニューラル学習挙動に加え、二端子メモリスターでは実現できないゲート制御可能なヘテロシナプス性機能を示す。例えば、一対のフローティング電極(シナプス前ニューロンとシナプス後ニューロン)の間のコンダクタンスは、調節端子に電圧パルスをかけることによって約10倍変化する。in situ走査プローブ顕微鏡法、極低温電荷輸送測定、デバイスモデリングの結果から、バイアスに誘起されるMoS2欠陥運動が、ショットキー障壁の高さを動的に変化させて、抵抗スイッチングを駆動することが明らかになった。総括すると、メモリスターとトランジスターをシームレスに一体化して1つの多端子デバイスにすることによって、二次元材料における欠陥動力学の物理の研究や複雑な神経形態学的学習が可能になると思われる。

