がん幹細胞:BCAT1はAML幹細胞でαKGレベルを制限してIDHmut様のDNA過剰メチル化を引き起こす
Nature 551, 7680 doi: 10.1038/nature24294
分枝鎖アミノ酸(BCAA)経路と高レベルのBCAAトランスアミナーゼ1(BCAT1)は、複数のがんのアグレッシブさと関連することが、最近になって分かってきた。しかし、この過程でBCAT1が機構的にどのような役割を持つのかはほとんど明らかになっていない。本研究で我々は、ヒトの急性骨髄性白血病(AML)幹細胞集団と非幹細胞集団で高分解能のプロテオミクス解析を行い、白血病幹細胞ではBCAA経路が濃縮され、BCAT1タンパク質と転写産物が過剰発現していることを見いだした。BCAT1は、BCAA群のα-アミノ基をα-ケトグルタル酸(αKG)へと転移させており、これが細胞内αKGの恒常性の重要な調節因子であることが明らかになった。トリカルボン酸回路における役割に加えて、αKGは、EGLN1(Egl-9 family hypoxia inducible factor 1)などのαKG依存的ジオキシゲナーゼや、TET(ten-eleven translocation)ファミリーDNAデメチラーゼの必須コファクターである。白血病細胞でBCAT1をノックダウンすると、αKGの蓄積が起こり、EGLN1を介したHIF1αタンパク質の分解が引き起こされた。この結果、増殖と生存が損なわれて、白血病イニシエーション能が失われた。対照的に、白血病細胞でBCAT1を過剰発現させると、細胞内αKGレベルが低下し、TET活性の変化を介したDNAの過剰メチル化が起こった。BCAT1が高レベル(BCAT1high)のAMLは、がん代謝物の2-ヒドロキシグルタル酸によりTET2が阻害されている変異型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDHmut)を持つ症例と似たDNAの過剰メチル化表現型を示した。高レベルのBCAT1は、IDHWTTET2WTでの全生存の短縮と強く相関するが、IDHmutやTET2mut AMLとは相関しない。IDHmut AMLに特徴的な遺伝子群は、IDHWTTET2WTBCAT1high状態の患者からの試料で濃縮されていた。BCAT1high AMLは、白血病幹細胞シグネチャーのロバストな濃縮を示し、対となる試料の解析により、疾患再発に際してBCAT1レベルが顕著に増加することが明らかになった。以上のことから、細胞内αKGを制限することで、BCAT1はBCAA異化をHIF1αの安定やエピゲノム全体状況の調節に結び付け、IDH変異の影響を模倣することが示された。我々の結果は、BCAA–BCAT1–αKG経路が、IDHWTTET2WT AMLの患者において、白血病幹細胞の機能を弱めるための治療標的になることを示唆している。

