神経生物学:大幅に小さくしたMeCP2がレット症候群様の神経障害を救済する
Nature 550, 7676 doi: 10.1038/nature24058
X連鎖MECP2遺伝子のヘテロ接合性変異は、レット症候群という神経疾患の原因となる。MeCP2(methyl-CpG-binding protein 2)タンパク質はエピジェネティックリーダーで、そのクロマチンへの結合は主として5-メチルシトシンに依存する。MeCP2は複数の細胞過程に機能的に関わることが知られており、その基盤となる40種類以上の結合相手との相互作用が報告されている。その中には、転写コリプレッサー(NCoR/SMRT複合体など)、転写アクチベーター、RNA、クロマチンリモデリング因子、マイクロRNAプロセシングタンパク質、スプライシング因子などが含まれる。それによってMeCP2は、成熟したニューロンに不可欠なさまざまな過程を統合する多機能ハブという役割を果たしているとされてきた。しかし、幅広い機能という概念に反して、レット症候群の原因となるミスセンス変異は異なる2つの領域に集中しており、これらは別々の巨大分子との相互作用部位(メチルCpG結合ドメインとNCoR/SMRT相互作用ドメイン)に一致している。今回我々は、メチルCpG結合ドメインとNCoR/SMRT相互作用ドメイン以外のアミノ酸配列をほとんど全て取り除くことによって、MeCP2の主要な機能はDNAとNCoR/SMRT複合体とを物理的に結び付けることであるという仮説を検証した。その結果、N末端領域とC末端領域の両方を欠失させた短縮型MeCP2(元のタンパク質のほぼ半分の大きさ)を発現するマウスの表現型はほぼ正常であり、さらに中央領域を欠失させた最小限のMeCP2を発現するマウスでも見られる症状は軽く、1年以上生存することが分かった。この最小限のMeCP2タンパク質を遺伝学的活性化やウイルスを介した脳への送達によってMeCP2欠損マウスに導入すると、神経症状を防いだり、回復させたりすることができた。このように、MeCP2タンパク質は配列全体が進化上よく保存されているが、DNAやコリプレッサーとの結合ドメインは、単独でレット症候群様の症状を防ぐのに十分であり、治療に活用できる可能性がある。

