構造生物学:リソソームのカルシウム透過性チャネルTRPML3のクライオ電子顕微鏡構造
Nature 550, 7676 doi: 10.1038/nature24055
イオンチャネル活性の脂質による調整は、細胞内シグナル伝達の基本的な要素であることが次第に認められつつある。TRPML(transient receptor potential mucolipin)チャネルファミリーはTRPスーパーファミリーに属していて、TRPML1–TRPML3の3つのメンバーから構成される。TRPMLは、後期エンドソームおよびリソソーム(LEL)の主要なCa2+透過性チャネルである。これらのチャネルは細胞小器官からのCa2+放出を調節していて、この放出は細胞小器官のトラフィッキングや融合などのさまざまな生理的過程に重要である。TRPML1をコードするMCOLN1遺伝子の機能喪失変異は、神経変性を伴うリソソーム蓄積症であるムコリピドーシスIV型の原因となり、TRPML3の機能獲得変異(Ala419Pro)はマウスのvaritint–waddler(Va)表現型を引き起こす。存在量が少なく、LELに高濃度で含まれるシグナル伝達脂質のホスファチジルイノシトール 3,5-ビスリン酸(PtdIns(3,5)P2)はTRPMLチャネルを活性化するが、細胞膜に高濃度に含まれる、PtdIns(4,5)P2などの他のホスホイノシチドはTRPMLを阻害する。PtdIns(3,5)P2による活性化とPtdIns(4,5)P2による阻害には、チャネルのN末端にある保存された塩基性残基が重要である。しかし、構造に関する情報がないために、TRPMLチャネルがPtdIns(3,5)P2を認識し、Ca2+のコンダクタンスを上昇させる仕組みは分かっていない。今回我々は、コモンマーモセット(Callithrix jacchus)由来の完全長TRPML3チャネルについて、総合分解能2.9 Åでのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を報告する。この構造によって、イオン透過の分子基盤だけでなく、TRPMLの独特な構造が明らかになった。この構造では、電位センサー様ドメインが細胞質側ドメインを介して小孔に結合していて、我々はこの細胞質側ドメインをムコリピンドメインと命名した。これらのデータと機能研究の結果から、ムコリピンドメインはPtdIns(3,5)P2の結合とそれに続くチャネル活性化に関わっていて、脂質に依存するTRPMLのゲート開閉に関わる「開閉用滑車」のような働きをしていると考えられる。

