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気候科学:氷河の質量損失の増大によって駆動されるグリーンランドにおけるデルタの前進平衡作用

Nature 550, 7674 doi: 10.1038/nature23873

気候変動は、北極域において顕著であり、北極域の沿岸地帯の脆弱性を高めている。例えば、グリーンランド氷床の融解量の増大、海氷の減少、永久凍土層の分布は、沿岸域の地形ダイナミクスを変化させる可能性がある。グリーンランドのデルタは、人間活動の影響をほとんど受けていないが、そのサイズは、淡水の流出量と堆積物フラックスの増大によって大きくなる可能性があるのに対して、氷結しない期間における波の活動の増大によって小さくなる可能性があり、正味の影響は今のところ明らかになっていない。本論文では、グリーンランド南西部のデルタは1940年代から1980年代までほぼ安定していたが、1980年代から2010年代の温暖化している北極域では前進、つまり土砂堆積がデルタを海へ拡大したことを示す。今回の結果は、121のデルタの1940年代以降の面積変化に基づいており、新たに見つかった航空写真とリモートセンシング画像を用いて見積もられた。我々は、解氷期と同時に生じた、グリーンランド氷床からの淡水の大量流出によって、デルタの前進平衡作用が駆動されたことを見いだした。デルタの前進平衡作用は、1980年代から2010年代における各デルタの環境条件の局地的な変化ではなく、局地的な初期環境条件(つまり、1980年代における、0°Cを超える年当たりの積算気温、淡水の流出、海氷)によって制御されていた。これは、アラスカ、シベリア、カナダ西部の海岸平野に沿った北極域の堆積海岸における著しい侵食傾向や、北極における主要河川の大規模デルタに沿った侵食と堆積の空間的な変化パターンとは対照的である。今回の結果から、変動する気候における北極沿岸域の変化についての理解が向上するとともに、沿岸地域に対する、氷河の質量損失とそれに伴う淡水の流出の増大や、解氷期の長期化の影響が明らかになった。

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