物性物理学:正方晶ホイスラー材料における室温を超える温度での磁気反スキルミオン
Nature 548, 7669 doi: 10.1038/nature23466
磁気スキルミオンは、周囲の磁化材料から反転磁化領域を隔てるカイラル境界に囲まれたトポロジー的に安定な渦状の状態である。磁気スキルミオンは、ナノスケールのカイラル磁壁と密接に関連しており、ムーアの法則を超える従来型や神経形態学的なコンピューティングへの応用向けのメモリー素子や論理素子として使用できる可能性がある。特に興味深いのは、それぞれ100程度の磁壁を有する縦型磁性ナノワイヤーで構成される「レーストラックメモリー」で、並外れた容量と性能を示す固体不揮発性メモリーとして有望である。その性能は、合成反強磁性体レーストラックでは、ナノ秒電流パルスによってカイラル磁壁が非常に速く(最高で1 km s−1)移動することに起因する。スキルミオンは本質的に、自らに閉じ込められた1対のカイラル磁壁で構成されるが、原理的には磁壁成分自体よりも摂動に対して安定なので、スピントロニクス、特にレーストラックメモリーへの使用に魅力的である。スキルミオンの安定化は、一般的に、反転対称性が破れた系において実現されており、そうした系では非対称ジャロシンスキー・守谷相互作用によって均一な磁性状態が渦巻き状態に変わる。結晶対称性に応じて、異なる2種類のスキルミオン、すなわちブロッホ型とネール型のスキルミオンが実験で観測されている。今回我々は、D2d結晶対称性の非中心性正方晶ホイスラー化合物において、磁気反スキルミオンというまた別の種類のスキルミオンが実験で現れたことを報告する。反スキルミオンの特徴は、境界壁の周囲をたどるとブロッホ型とネール型が交互に現れることである。正方晶の底面を伝搬するらせん磁気基底状態は、4回対称軸に沿って磁場を印加すると、広い温度範囲で反スキルミオン格子状態に変換される。ローレンツ透過電子顕微鏡法で直接画像化すると、100 Kから室温を大きく超える温度において磁場によって安定化された反スキルミオン格子と孤立した反スキルミオンが見られ、低温ではゼロ磁場準安定反スキルミオンが見られた。こうした結果は、磁気スキルミオンファミリーを拡大し、個別の目的に応じて設計された複雑なスキルミオン構造のエンジニアリングへの道を開くものである。

