がん:キナーゼ不活性型の変異型Brafが肺腺がんを誘発する
Nature 548, 7666 doi: 10.1038/nature23297
ヒトの肺腺がんのほぼ半数では、発がんを開始する事象がいまだに解明されておらず、この事実が選択的な標的治療法の開発を難しくしている。しかし、これらのがんには明白な発がん作用を持たない変異も多数存在し、その中にはBRAF不活性型変異が含まれる。肺では不活性型の変異型BRAFが、他の腫瘍で頻繁に見られる活性型の変異型V600Eよりも圧倒的に多い。今回我々は、マウスでの内在性のBraf(D631A)キナーゼ不活性型アイソフォーム(ヒトのBRAF(D594A)変異に相当する)の発現は、in vivoで肺腺がんの引き金となることを実証する。これは、BRAF不活性型変異が肺の発がんの開始事象であることを示唆している。BRAF不活性型変異は、KRAS誘導性ヒト肺腫瘍の一部でも見つかっている。マウスの肺細胞でKras(G12V)とBraf(D631A)が同時に発現すると、腫瘍イニシエーション(Crafキナーゼ活性が関わる現象)が著しく増強され、進行した肺腺がんで活性化されると腫瘍のプログレッションが効果的に加速される。我々はまた、野生型BrafキナーゼがKras(G12V)/Braf(D631A)誘導性腫瘍の維持に重要な役割を果たしていることも示す。野生型Braf対立遺伝子を除去すると、発がん毒性につながるMAPKシグナル伝達のさらなる亢進が誘発されて肺腺がん発生が妨げられる。この作用は、Mekの薬理学的阻害により打ち消され、腫瘍の増殖が回復する。しかし、野生型Brafを消失させると、クラブ細胞の分化転換も誘発されるため、致死的な細気管支内損傷が急激に発生する。これらの観察結果が示すように、MAPK経路のシグナル強度は、腫瘍発生だけでなく、がん開始細胞の性質と、最終的に生じる腫瘍の表現型にも影響する決定要因である。

