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材料科学:無機溶融塩中の安定コロイド

Nature 542, 7641 doi: 10.1038/nature21041

コロイド溶液とは、ある相の粒子や液滴(溶質)を、一般的に液体状態の別の相(溶媒)に均一に分散させたものである。コロイドは、生物学的、化学的、技術的な過程で普遍的に見られ、全く異なる成分を均質化する。コロイド系を合体や凝集しないよう安定化させるには、ファンデルワールス引力に打ち勝つほど強い反発力を持ち、粒子同士が分離した状態を維持するように各溶質粒子の表面を設計する。水(誘電定数80)などの誘電定数の高い溶媒の中では、荷電溶質の静電的安定化がうまく働く。これに対して、ヘキサン(誘電定数は約2)などの低極性溶媒中のコロイド安定化は、各溶質粒子の表面を、柔軟なブラシ状の鎖を持つ分子(界面活性剤)で修飾することによって実現できる。今回我々は、さまざまな無機溶融塩中で溶質粒子(金属、半導体、磁性材料など)が安定コロイドを形成するコロイド系について報告する。こうしたコロイドの安定性は、従来の静電的機構や立体的機構では説明できない。溶質と溶媒の数多くの組み合わせのスクリーニングによって、コロイドの安定性が溶質–溶媒界面での化学結合の強さに帰着できることが分かった。また、理論的解析と分子動力学モデリングから、表面に結合した溶媒イオンの層が、溶質粒子の周囲の溶融塩に長距離電荷密度振動を生成して、粒子の凝集を防いでいることが示唆された。無機溶融物中の無機粒子からなるコロイドによって、固体科学や工学応用にコロイド技術を導入する機会が得られる。

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