細胞生物学:有糸分裂の際のリン酸化によるAPC/C活性化の分子機構
Nature 533, 7602 doi: 10.1038/nature17973
真核生物では、分裂後期促進複合体(APC/C、別名サイクロソーム)は、特異的な細胞周期タンパク質のユビキチン依存的なタンパク質分解を調節して、有糸分裂での染色体分離およびG1期への進入を調整している。APC/Cの触媒活性や異なる細胞周期段階で特定のタンパク質の破壊を指定する能力は、Cdc20およびCdh1という構造的に近縁な2つのコアクチベーターサブユニットとの相互作用によって制御される。コアクチベーターは、基質のデグロンを認識して、コグネイトであるE2に対するAPC/Cの親和性を高める。有糸分裂の際には、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)とポロ様キナーゼ(Plk)がCdc20およびCdh1が仲介するAPC/Cの活性化を制御する。Cdc20がAPC/Cを活性化するためには、APC/Cのサブユニット、特にApc1およびApc3の過剰リン酸化が必要であるが、Cdh1はリン酸化されることでAPC/Cと結合できなくなる。どちらのコアクチベーターも共通のC-boxモチーフおよびIle-Arg尾部モチーフを介してAPC/Cに結合するので、この異なる調節の基礎となる機構は明らかになっておらず、特定のAPC/Cリン酸化部位の役割も分かっていない。今回我々は、低温電子顕微鏡法と生化学的解析を用いて、ヒトAPC/Cがリン酸化を受けることでCdc20によるAPC/Cの制御が可能になる仕組みの分子基盤を明らかにする。Apc1の自己抑制性領域は分子スイッチとして機能し、アポ状態の非リン酸化APC/CはC-box結合部位と相互作用して、APC/CとCdc20との結合を妨げる。この自己抑制性領域がリン酸化すると、APC/CがC-box結合部位から離れる。自己抑制性領域のリン酸化、そしてそれによる自己抑制の解除が効率的に行われるには、Cks(Cdk regulatory subunit)と複合体を形成したCdk–サイクリンがApc3の過剰リン酸化されたループへ動員される必要がある。また、低分子阻害剤であるトシル-L-アルギニンメチルエステルが、APC/CCdh1よりもAPC/CCdc20を選択的に抑制し、C-boxモチーフおよびIle-Arg尾部モチーフの両方の結合部位と相互作用することも分かった。今回の結果から、有糸分裂の際のリン酸化によるAPC/Cの調節機構が明らかになり、この状態の選択的な阻害剤を開発するための論理的根拠が得られた。

