消化器がん:ネクロソームはCXCL1とMincleによる免疫抑制を介して膵臓がんの発生を促す
Nature 532, 7598 doi: 10.1038/nature17403
腫瘍性の膵臓上皮細胞は、カスパーゼ8に依存するアポトーシス性の細胞死を介して死ぬとされており、化学療法は腫瘍のアポトーシスを促すと考えられている。その一方で、がん細胞はアポトーシスを中断させて生き残ることも多い。また別のタイプのプログラム細胞死にネクロトーシス(プログラムされたネクローシス)があるが、膵管腺がん(PDA)でのその役割は不明である。PDAでネクロトーシスの誘導因子と考えられるものは多数あり、その中にはTNFR1(tumour necrosis factor receptor 1)、CD95(別名Fas)、TRAIL(TNF-related apoptosis-inducing ligand)受容体、Toll様受容体、活性酸素種、化学療法薬などの連結が含まれる。本研究では、PDAではネクロソームの主要構成因子であるRIP(receptor-interacting protein)1とRIP3が高度に発現しており、化学療法薬ゲムシタビンによってさらに発現が上方調節されることを報告する。in vitroでネクロソーム活性を遮断するとがん細胞の増殖が促進され、悪性の発がん性表現型が誘導された。対照的に、in vivoでのPIP3欠失あるいはRIP1阻害は、マウスで発がんのプログレッションを防止し、これは免疫原性の高い骨髄細胞の発生やT細胞の浸潤と関連していた。正常なRIP1/RIP3シグナル伝達が起こっている免疫抑制的な腫瘍微小環境は、部分的にはケモカイン誘引因子CXCL1のネクロトーシスによる発現誘導に依存しており、CXCL1の遮断はPDAに対して防御的に働いた。さらに、PDAでは細胞質のSAP130(ヒストンデアセチラーゼ酵素複合体のサブユニット)がRIP1/RIP3に依存する形で発現していて、その同族受容体であるMincleは腫瘍浸潤性骨髄細胞で上方調節されていた。SAP130によるMincleの連結は発がんを促進するが、Mincleの欠失は発がんを抑制し、RIP3欠失によって誘導される腫瘍微小環境の免疫原性再プログラム化を模写した表現型を示した。免疫細胞を除去する実験からは、抑制性マクロファージはPDAで腫瘍形成を促進するが、RIP3やMincleが欠失するとその免疫抑制効果が失われることが示唆された。従って、T細胞は、RIP3あるいはMincleシグナル伝達が障害されていないマウスではPDAのプログレッションを抑えることはないが、RIP3やMincleが存在しない状態では抗腫瘍免疫に不可欠なメディエーターへと再プログラム化される。我々の結果は、ネクロトーシスによって誘導されるCXCL1とMincleのシグナル伝達からなる並行的なネットワークの存在を示しており、これらがマクロファージ誘導性の適応免疫抑制を促進して、PDAのプログレッションを可能にしていると考えられる。

