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がんの代謝:足場非依存性増殖の際には還元的カルボキシル化が酸化還元恒常性を支える

Nature 532, 7598 doi: 10.1038/nature17393

細胞は、細胞外マトリックス(ECM)への接着を介して増殖や生存のための刺激を受け取る。ほとんどの悪性細胞の特性である足場非依存性増殖のためには、ECMが誘発するシグナルへの依存を断ち切る必要がある。細胞がECMから脱落すると、それに伴ってグルコース代謝が変化するために活性酸素種(ROS)の産生が増大する。今回我々は、足場非依存状態への適応中に酸化還元状態の恒常性維持と増殖を支える働きをする非定型的な経路を明らかにした。細胞が単層培養から脱落して足場非依存性の腫瘍スフェロイドとして増殖するようになると、それに伴ってグルコースとグルタミン両方の代謝が変化するのが観察された。つまり、スフェロイドではグルコースとグルタミンの酸化が共に抑制されていたが、グルタミンからの還元的クエン酸形成は亢進していた。還元的グルタミン代謝は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)ヌルのホモ接合細胞やIDH1阻害剤の投与によって抑制されるので、この代謝活性は細胞質のIDH1に強く依存している。低酸素は還元的代謝を誘発することがよく知られているが、還元的グルタミン代謝は低酸素条件でなくても起こった。IDH1は、スフェロイド中のミトコンドリアROS産生を抑制し、IDH1活性を抑制すると、ミトコンドリアのROSを必要とする何らかの機構を介してスフェロイドの増殖が抑えられた。同位体を用いた追跡により、スフェロイドでは細胞質で還元的に産生されたイソクエン酸/クエン酸がミトコンドリアに取り込まれ、IDH2による酸化などからなる酸化的代謝経路に入ることが分かった。それによってミトコンドリア内ではNADPHが生成し、細胞はミトコンドリアのROSを抑制できるようになって、増殖を最大限まで行えるようになる。単層培養ではIDH1もIDH2も必須ではないが、このどちらか一方を欠失させるとミトコンドリアのROSが増加し、スフェロイドのサイズが小さくなった。これはミトコンドリアのクエン酸輸送タンパク質を欠失させた場合と同じである。まとめるとこれらのデータは、足場非依存状態への適応には、IDH1に依存した還元的カルボキシル化から始まってミトコンドリアのROS産生抑制という結果をもたらす、クエン酸代謝の根本的変化が必要であることを示している。

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