有機化学:炭酸塩で促進されるC–Hカルボキシル化による二酸化炭素利用
Nature 531, 7593 doi: 10.1038/nature17185
二酸化炭素(CO2)を汎用化学品合成の原料として用いることは、温室効果ガス排出を削減する魅力的な手段であり、再生可能合成燃料を目指す足掛かりとなる可能性がある。CO2からの化合物合成の主な障害は、炭素–炭素(C–C)結合を効率よく形成するのが難しいことである。つまり、CO2は炭素求核剤と容易に反応するものの、こうした中間体の生成には、高エネルギー試薬(強還元性金属や有機強塩基など)や炭素–ヘテロ原子結合、比較的酸性度の高い炭素–水素(C–H)結合が必要になる。こうした必要条件があるせいで、基質としてCO2を使う環境的利点が無くなってしまい、この化学過程は少量の合成ターゲットに限定される。今回我々は、セシウムカチオンまたはカリウムカチオンを含有する中温(200~350°C)溶融塩を用いると、炭酸イオン(CO32−)が、非常に酸性度の低いC–H結合(pKa > 40)を脱プロトン化することによって炭素求核剤を生成でき、この求核剤がCO2と反応してカルボン酸塩を生成することを示す。我々は、考えられる応用を例示するため、C–Hカルボキシル化とそれに続くプロトン化を用いて、2-フロ酸をフラン-2,5-ジカルボン酸(FDCA)に変換した。FDCAは、数多くの応用がある非常に望ましいバイオベース原料であり、そうした応用には、石油由来ポリエチレン・テレフタレート(PET)を大量に置き換える可能性があるポリエチレン・フランジカルボキシレート(PEF)の合成が含まれる。2-フロ酸はリグノセルロースから容易に合成できることから、CO32−で促進されるC–Hカルボキシル化は、非可食バイオマスとCO2を、有用な原料化学物質に変換する手段となることが分かる。今回の結果から、多炭素化合物合成にCO2を用いる新しい戦略が得られる。

