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分子進化学:有性生殖は分子進化の動態を変化させることで適応を加速させる

Nature 531, 7593 doi: 10.1038/nature17143

有性生殖と遺伝的組換えは、かなりコストが掛かるにもかかわらず、自然界に広く行き渡っている。進化の過程でこれらの現象を維持する原動力の解明は、生物学の重要課題の1つである。以前から提唱されている仮説の1つでは、有性生殖が有利になるのは、組換えが適応を加速させるためだとしている。この利点の基盤となり得る集団遺伝学的機構が、理論からいくつか提案されている。例えば、有性生殖では、干渉型競争を緩和することで有利な変異の固定を促進する場合(フィッシャー・マラー効果)と、有害な変異からの分離によって有利な変異の固定を促進する場合[ruby in the rubbish(ごみの中のルビー)効果]がある。これまでの実験で、有性生殖が適応速度を速め得ることは明らかになっているが、これらの研究ではこの加速効果の原動力となる進化的動態をゲノムレベルで調べてはいなかった。本論文では、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の実験的な有性生殖集団と無性生殖集団の間で行った、我々の知るかぎりで初めての、塩基配列レベルでの適応動態の比較解析について報告する。この比較解析によって、有性生殖が適応を加速させる特異的機構を明らかにすることができた。有性生殖が、固定する変異の範囲を変化させることによって進化の分子シグネチャーを変化させることが分かり、また、そうなるのはクローン干渉の低減によるという理論的予測が裏付けられた。さらに、適応途上の無性生殖集団では、かなり有害な変異がヒッチハイクにより固定されることも明らかになった。これに対して、組換えはそうした有害な変異の固定を防ぐ。これらの結果から、有性生殖は、自然選択によって有害な変異から有利な変異をより効果的に選別できるようにすることで、適応を加速させ、適応の分子シグネチャーをも変化させることが明らかになる。

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