構造生物学:真核生物翻訳開始因子eIF2Bの結晶構造
Nature 531, 7592 doi: 10.1038/nature16991
真核細胞は、さまざまなストレスを受けると、eIF2B(真核生物翻訳開始因子2B)を阻害することによってタンパク質合成を抑制する。eIF2Bは、eIF2(同じく翻訳開始因子で、α、β、γサブユニットからなるヘテロ三量体Gタンパク質)のグアニンヌクレオチド交換因子である。eIF2BはeIF2のγサブユニット(eIF2γ)に結合したGDPをGTPに交換するが、ストレスを受けてeIF2αがリン酸化されると阻害される。eIF2Bはα、β、γ、δ、という5種類のサブユニット2個ずつからなるヘテロ十量体であり、その中でα、β、δサブユニットは調節性複合体を形成し、γ、サブユニットは触媒複合体を形成している。eIF2B複合体全体の三次元構造は、これまで決定されていなかった。今回我々は、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)のeIF2Bの結晶構造を決定した。この構造は前例のないサブユニット配置を採っており、2個のγ触媒二量体がα2β2δ2調節性六量体の両側に1個ずつ結合している。この構造に基づいて、surface-scanning site-directed photo-cross-linking法(部位特異的光学架橋による表面探査法)によりin vitroで解析を行い、eIF2αサブユニットとの結合表面が調節性複合体上に、eIF2γサブユニットとの結合表面が触媒複合体上に、遠く離れて存在することを明らかにした。eIF2γサブユニット結合表面は、ヌクレオチド交換に重要で保存されている「NFモチーフ」の近くにある。リン酸化されたeIF2αはリン酸化されていないeIF2αに比べてeIF2Bに強く結合することが分かり、リン酸化eIF2αとeIF2Bとの複合体の構造モデルを作製した。これらの結果から、eIF2αがリン酸化されると「非生産的な」eIF2–eIF2B複合体が生じてeIF2γのヌクレオチド交換が妨げられることが示され、eIF2Bを介して翻訳を制御するストレス応答機構の構造基盤が明らかになった。

