Letter
化学:ディールス・アルダー反応の静電触媒反応
Nature 531, 7592 doi: 10.1038/nature16989
電位勾配をかけて反応速度を制御できるのは、酸化還元系だけであると考えられることが多い。しかし、最近の理論研究によって、酸化還元系があってもなくても、さまざまな化学反応の結果に配向電場が影響を及ぼすことが示唆されている。こうした可能性は、少数の電荷分離共鳴寄与体を通して多くの形式的な共有結合種を安定化できることから生じる。かけた電場が、こうした少数の電荷分離共鳴寄与体の1つを静電的に安定化させる方向を向いているとき、共鳴度が高くなり、分子や遷移状態が全体的に安定化される。これは、電場刺激に対して反応体が近づく方向を制御できれば、外部電場を使って非酸化還元過程の速度論と熱力学を操作できることを意味している。本論文では、炭素–炭素結合の形成が電場によって加速されることを示す実験的証拠を提示する。我々は、表面モデル系を設計して、ディールス・アルダー反応を調べ、走査型トンネル顕微鏡破断接合法と組み合わせた。単一分子レベルで行うこの手法は、近づきつつある反応体全体に電場刺激を与えるのに最適である。単一分子接合の形成頻度が5倍高くなり、これが、電場が存在し、ジエノフィルからジエンへの電子の流れが有利になる方向を向いているときに起こる反応に起因することを、我々は見いだした。今回の結果は、この系の理論モデルの量子化学計算によって予測される結果と定性的に一致し、化学触媒反応に対する新しい方法の到来を告げるものである。

