がんの代謝:変異型Krasのコピー数は代謝の再プログラム化と治療感受性を決定する
Nature 531, 7592 doi: 10.1038/nature16967
非小細胞肺がんではRAS/MAPK(mitogen-activated protein kinase)シグナル伝達経路の調節異常が頻繁に見られ、それはKRASの活性化変異によることが多い。単一のKras対立遺伝子の内因性変異でも、マウスで肺腫瘍形成を促進するのに十分だが、悪性進行を起こすにはさらなる遺伝的変化が必要である。最近我々は、KrasG12D/+;p53ヌルマウスの進行性肺がんでは、しばしばKrasG12D対立遺伝子の増加(KrasG12D/Kraswild-type > 1)が見られることを示した。このことから変異型Krasのコピー数増加は、プログレッションの際に正の選択を受けると考えられる。本研究で我々は、変異型Krasをホモ接合性とヘテロ接合性に持つ、マウス胚性繊維芽細胞と肺がん細胞を用いた包括的解析により、これらの遺伝子型が表現型でも異なることを明らかにする。特に、KrasG12D/G12D細胞では解糖系の切り替えが起こって、トリカルボン酸回路とグルタチオン生合成へ向かうブドウ糖由来代謝産物が増加し、その結果グルタチオンを介した解毒が亢進する。この代謝経路のつなぎ替えは、変異型KRASホモ接合性の非小細胞肺がん細胞およびin vivoでマウスに自然発生した進行性肺がん(KrasG12Dのコピー数増加が高頻度で見られる)でも再現されたが、対応する初期腫瘍(KrasG12Dヘテロ接合)では見られなかった。最後に我々は、変異型Krasコピー数の増加は、独特な代謝依存性を生み出すこと、そしてこの依存性をこれらのアグレッシブな変異型Kras腫瘍を選択的に標的とするために利用できることを示す。我々の結果は、変異型Kras肺腫瘍は単一の疾患ではなく、代謝プロファイルや予後、治療感受性の異なる2種類の腫瘍からなる不均一な集団であり、これらは変異対立遺伝子の相対的な量に基づいて識別できることを示している。また我々は、肺がんの悪性進行で起こる代謝経路の変換について、我々の知るかぎりで初めてin vivoでの証拠を提示している。

