構造生物学:大腸菌由来のタイプI–E Cascade複合体における無差別的PAM認識の構造基盤
Nature 530, 7591 doi: 10.1038/nature16995
CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)とcas(CRISPR-associated)オペロンは、原核生物が外来遺伝因子に対処するためのRNA依存性獲得免疫系を構成している。CRISPR系ではタイプIが95%を占め、遺伝子発現と細胞運命を制御するのに使われてきた。CRISPR RNA(crRNA)の誘導による干渉では、Cascade(CRISPR-associated complex for antiviral defence)がcrRNAに誘導される二本鎖DNAの侵入と標的DNA鎖との相補的な塩基対形成を促進し、その一方で非標的DNA鎖を引き離してRループを形成させる。次に、ヌクレアーゼ活性とヘリカーゼ活性を持つCas3が誘導され、2本のDNA鎖を分解する。自己と外来因子との識別には、標的DNAを挟むPAM(protospacer adjacent motif)配列が不可欠である。今回我々は、大腸菌(Escherichia coli)由来のCascadeについて、標的である外来性二本鎖DNAに結合した状態の2.45 Å分解能での結晶構造を報告する。5′-ATG PAMは二本鎖の状態で、CascadeのCse1サブユニット中の3つの特徴的構造により、副溝側から認識される。副溝によるDNA認識には本質的に無差別性を伴うことで、1種類のCascade複合体が複数の異なるPAM配列に応答できるという観察結果が合理的に説明される。最適なPAM認識と同時に、グルタミンのくさびが差し込まれ、標的DNA鎖が方向性をもって順次ほどかれ、部分ごとにcrRNAと塩基対を形成できるようになる。非標的鎖は25 Å離れた並行した通路に沿って導かれ、これがCse2二量体の後ろに固定されることによって、Rループ構造が更に安定化する。これらの観察結果は、PAMに依存して方向性をもって生じるRループの形成過程を理解するための構造基盤となる。

