がんの代謝:リボソームによる異なるコドンの読み取りから明らかになった腫瘍特異的なプロリン脆弱性
Nature 530, 7591 doi: 10.1038/nature16982
腫瘍の増殖や代謝適応により、タンパク質合成に使われる特定のアミノ酸の利用可能性が制限されることがある。最近、ある種のがん細胞の増殖や生存が、グリシン、グルタミン、ロイシン、セリンの代謝に依存していることが示されている。さらに、急性リンパ芽球性白血病に対する、L-アスパラギナーゼが誘導するアスパラギン除去を用いた有望な治療法が開発されてきた。しかし現在のところ、各腫瘍における制限アミノ酸を調べる個別化検出系はない。今回我々は、制限アミノ酸を検出するためにリボソームプロファイリングを利用して、リボソームによる異なるコドンの読み取りを測定するための方法であるdiricoreを開発した。最初に、代謝阻害剤解析と栄養素除去解析によって、diricoreの機能性と制約を示す。特に、L-アスパラギナーゼ処理により、アスパラギンコドンに特異的なdiricoreシグナルと高レベルのアスパラギンシンテターゼ(ASNS)の両方が誘発されたことは重要である。次に、diricoreを腎臓がんに適用し、プロリンの利用が制限されていることを示すシグナルを見いだした。この観察は、アスパラギンの場合と同様に、プロリン産生の主要な酵素であるPYCR1の高レベルと関連していたことから、腫瘍の増殖を可能にする代償機構があると考えられる。実際に、PYCR1はプロリン前駆体の不足によって誘導され、プロリンが制限されているときにPYCR1を抑制すると腎臓がん細胞の増殖が減弱した。高レベルのPYCR1は浸潤性乳がんで観察されることが多い。乳がんのin vivoモデル系でも、プロリンの利用が制限されていることを示すシグナルが明らかになった。さらに、この系でCRISPRによってPYCR1をノックアウトすると、腫瘍発生性の増殖が阻害されることが分かった。従って、diricoreによって、未知のアミノ酸の欠乏、つまり、がん治療で重要な代謝経路を標的とするために用いることのできる脆弱性を明らかにできる可能性がある。

