Letter
神経科学:成体でのShank3発現の回復は自閉症様表現型を選択的に救済する
Nature 530, 7591 doi: 10.1038/nature16971
自閉症スペクトラム障害は神経発達障害であり、患者に症状が現れるのは一般に3歳になる前であるため、成人してから症状の改善が可能かどうかが自閉症研究における重要な問題の1つとなっている。今回我々は、自閉症スペクトラム障害の全症例の約1%に関与していると推定される、よく知られた単一遺伝子性自閉症遺伝子のShank3が、マウスの発達に必要であるかどうかを調べた。SHANK3はシナプス後膜に存在する足場タンパク質で、シナプス後膜肥厚部分の高分子シグナル伝達複合体の組み立てを調整することによって、シナプスの発達や機能、可塑性を調節している。マウスモデルでShank3遺伝子を破壊すると、シナプスの障害と、不安や社会的相互作用の障害、反復的行動などの自閉症様行動が引き起こされた。Shank3の条件付きノックインマウスモデルを新たに作製し、成体マウスでShank3遺伝子を再発現させたところ、線条体でのシナプスタンパク質の構成や樹状突起棘の密度、神経機能に改善が見られた。また、成体期には、社会的相互作用の障害や反復的なグルーミング行動といった一部の行動異常は救済できたが、不安や運動協調性の障害は回復できないことを示す行動上の証拠も得られた。総合するとこれらの結果は、発育後のShank3発現の活性化が神経機能に与える顕著な効果を明らかにするとともに、成体の病変した脳にもある程度の可塑性が存続していることを実証している。

