免疫学:軟膜と脳脊髄液との間でのエフェクターT細胞の移動
Nature 530, 7590 doi: 10.1038/nature16939
多発性硬化症では脳反応性のT細胞が中枢神経系(CNS)に侵入し、自己破壊的な炎症過程を誘導する。T細胞浸潤は、実質や髄膜内ばかりでなく、中枢神経系組織全体を浸す脳脊髄液(CSF)内にも認められる。このようなT細胞が脳脊髄液に到達する仕組み、その機能性、またこのような細胞が脳脊髄液と他の中枢神経系区画との間で移動するのかどうかは、いまだに仮説の域にとどまっている。今回我々は、多発性硬化症のモデルであるLewisラットの実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)では、エフェクターT細胞が軟膜から脳脊髄液に入り込むことを示す。T細胞は、軟膜のコラーゲン繊維が作る三次元ネットワーク中をブラウン運動的なランダムウォークで通って行く間に、脳脊髄液の流れによって軟膜表面から流し落とされた。膜から離れた細胞は、軟膜や中枢神経系実質に由来するT細胞と比べると大幅に低い活性化レベルを示した。しかし、これらの細胞の遺伝子発現プロファイルは組織由来T細胞のそれに非常によく似ており、また脳炎誘発能は完全に維持されていたので、特殊化した非病原性細胞の亜分画には相当しなかった。軟膜からのT細胞の脱離は、インテグリンVLA-4とLFA-1が、常在性マクロファージによって産生されるそれぞれのリガンドと結合することで抑えられた。CCR5/CXCR3を介するケモカインシグナル伝達および軟膜マクロファージとの接触によるT細胞の抗原刺激は、細胞の接着性を増強した。脳脊髄液中を浮遊しているT細胞は、中枢神経系血管で見られる血管接着と似た過程を介して軟膜へと再接着して、実質へ侵入することができた。T細胞再接着のために分子/細胞が持つべき条件は、軟膜環境からの脱離の必要条件と同じだった。我々のデータは、活性化T細胞が中枢神経系実質に入り込むためにライセンス化され、非活性化T細胞が選択的に脳脊髄液内へ放出されるチェックポイントが軟膜であり、T細胞は脳脊髄液を離れて、抗原が得られて組織を損傷できる領域へと到達できることを示している。

