進化遺伝学:酵母における糖質利用特化のトレードオフに関わる多遺伝子進化
Nature 530, 7590 doi: 10.1038/nature16938
新しい形質の進化には、ゲノム全体に散在する数多くの変異が関係している可能性がある。そうした一連の対立遺伝子の検出や検証は、いまだに進化遺伝学の重要な課題となっており、形質がはるか昔に生じたものである場合はとりわけ困難である。今回我々は、分岐から時間のたっている生物種の間に見られる前例のないほどの遺伝的複雑さの進化的なトレードオフについて解析した。ガラクトースを添加した1%グルコース培地で培養すると、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)ではガラクトース代謝の開始がグルコースを使い果たす時点まで遅延したが、同じサッカロミケス属のワイン酵母(S. bayanus)や他の酵母では、ガラクトース代謝の開始は遅延しなかった。S. cerevisiae由来の7個のガラクトース代謝遺伝子(GAL)のプロモーターをまとめてS. bayanusに導入したところ、ガラクトースを添加した1%グルコース培地においてガラクトース代謝開始遅延の表現型がほぼ再現されたが、分離して調べると大半のプロモーターは部分的な遅延効果を示した。GAL遺伝子のコード領域の変動について、ガラクトースを添加した1%グルコース培地で個別に調べたところ、これらの変動も遅延に関与していることが分かった。S. cerevisiaeのGALコード領域をまとめてS. bayanusに導入して調べると、重度の増殖障害が起こった。ガラクトースを添加した2.5%グルコース培地では、野生型S. cerevisiaeはGAL遺伝子の発現を抑制し、S. bayanusに対して強い増殖優位性を示した。こうした表現型は、遺伝子組換えでS. bayanusにS. cerevisiaeのGALプロモーター対立遺伝子やGALコード領域を導入するだけで、部分的に再構築できた。このようにS. cerevisiaeのGAL遺伝子群には、発現のゆっくりした誘導および積極的抑制を引き起こす調節プログラムがコードされており、この調節プログラムによって、グルコース–ガラクトースの代謝移行に際しては適応度が損なわれるが、グルコースが過剰にある場合には有益となる。総合するとこれらの結果から、深く分岐した種の間でも複雑な表現型の遺伝的マッピングが実現可能であることが明らかになる。

