生物物理学:超分解能画像化により明らかにされた、エピジェネティック状態の違いによって異なるクロマチン折りたたみ構造
Nature 529, 7586 doi: 10.1038/nature16496
後生動物のゲノムは、個々のヌクレオソームの周りでのDNAのパッケージングから、染色体全体の異なった区域への隔離まで、さまざまなスケールで空間的に組織化されている。キロ塩基からメガ塩基という中間的なスケールは、遺伝子や遺伝子クラスター、調節領域(ドメイン)のサイズに相当していて、DNAの三次元(3D)構造が複数の遺伝子調節機構に関係しているが、この構造の解明はいまだに難問となっている。このスケールではゲノムは異なったエピジェネティック状態のドメインに分かれていて、このようなエピジェネティック状態は遺伝子発現の調節に不可欠である。今回我々は、超分解能画像化法を用いて、異なったエピジェネティック状態にあるクロマチンの3D構造を調べた。ショウジョウバエ(Dorosophila)細胞のゲノムドメインを、転写活性が高い状態、不活性な状態およびPolycombで抑制された状態という3つのタイプに分類したところ、それぞれの状態に対して異なるクロマチン構造が観察された。クロマチンドメインのこれら3つのタイプは全て、3D構造の物理的サイズとそのドメインの長さの間にべき乗則に従うスケーリングが見られたが、スケーリング指数は各タイプごとに異なっている。Polycombによって抑制されているドメインが最も密にパッキング(充填)されており、クロマチンが非常に巧妙に折りたたまれていて、ドメインが長くなるほどクロマチンの充填密度が高くなる。転写活性の高いクロマチンや不活性なクロマチンで見られる自己相似的な構造とは異なり、Polycombによって抑制されている領域はドメイン内でのクロマチン混合の度合いが高いという特徴がある。さらに、不活性ドメインと比べると、Polycombによって抑制されているドメインは、近隣の転写活性の高いクロマチンを空間的に排除する傾向がずっと強い。コンピューターによるモデル化とノックダウン実験から、Polycomb群タンパク質による可逆的なクロマチン相互作用が、抑制されたクロマチンドメインのこのような独特なパッケージング特性に重要な役割を果たしていると考えられる。まとめると、我々の超分解能画像化法によって、ゲノムの調節に直接的に関わるキロ塩基からメガ塩基という長さスケールでクロマチンのパッケージングがエピジェネティック状態の違いに応じて異なることが明らかになった。

