がんゲノミクス:生殖系列バリアントFGFR4 p.G388Rは膜近傍のSTAT3結合部位を露出させる
Nature 528, 7583 doi: 10.1038/nature16449
バリアントrs351855-G/Aは、繊維芽細胞増殖因子受容体FGFR4(CD334)遺伝子のエキソン9のコーディング領域でよく見られる一塩基多型(c.1162G>A)である。その結果、この受容体の膜貫通領域の388番目のコドンで、グリシンからアルギニンへのアミノ酸置換(p.Gly388Arg)が起こる。このありふれたバリアントが、骨、乳房、大腸、前立腺、皮膚、肺、頭頸部のがんに加え、軟部組織肉腫や非ホジキンリンパ腫と関連していることを示す説得力のある遺伝学的な証拠があるものの、その根底にある生物学的な機構についてはまだ分かっていない。本研究では、保存されたグリシン388残基の荷電アルギニン残基への置換が膜貫通セグメントを変化させ、膜近傍の細胞質STAT3(signal transducer and activator of transcription 3)結合部位Y390-(P)XXQ393を露出させることを示す。我々は、生殖系列のI型膜貫通型受容体の細胞膜近傍にあるこうしたSTAT3結合モチーフは、STAT3タンパク質を細胞膜内側へ誘導することで、STAT3のチロシンのリン酸化を高めることを示す。意外にも、このような生殖系列バリアントは、COSMIC(Catalogue of Somatic Mutations in Cancer)データベースの体細胞変異としばしば同じ場所で見いだされる。我々は乳がんや肺がんのFgfr4一塩基多型のノックインマウスおよびトランスジェニックマウスモデルを用い、FGFR4 Arg388バリアントがSTAT3シグナル伝達の亢進を誘導することをin vivoで確認した。従って今回の結果により、rs351855とがんのプログレッションの加速との遺伝学的関連の背後にある分子機構が明らかになり、STAT3を細胞膜内側へ誘導する細胞表層分子の生殖系列バリアントは、がんの予後や疾患のプログレッションにとっての重要なリスクであることが示唆される。

