Letter

進化学:保存状態が極めて良好な極小の胚化石から初期被子植物の種子の休眠が明らかになる

Nature 528, 7583 doi: 10.1038/nature16441

前期白亜紀(約1億3000万~1億年前)を通じて起こった被子植物の急速な多様化は、陸上植生の構成に根本的な変化を引き起こした。こうした種子植物の急速な多様化については、ここ40年間のさまざまな古植物学上の発見に基づき、また、現生被子植物に関する知識の向上とそうした古植物学上の発見を統合することで、次第に解明が進んでいる。現生植物と化石植物の両方から得られた証拠に基づく一般的な仮説では、最も初期の被子植物は生活環の短い小型の植物であって、開けた条件あるいはおそらく下層条件にある撹乱された生育環境を利用したことが強調されている。しかし、前期白亜紀の被子植物の種子生物学および発芽生態学の解明に関係する直接の古生物学的データは極めて少ない。本論文では、保存状態が極めて良好な前期白亜紀の被子植物種子の化石に、胚とそれらに伴う栄養貯蔵組織を見いだしたことを報告する。多くのタクソンの化石胚をシンクロトロン放射X線断層顕微鏡法で観察した結果、散布時にはその全てが極小サイズであったことが明らかになった。これらの結果は、被子植物全体にとって極小の胚と種子の休眠が基本的なものだとする、現生植物に基づく仮説を裏付けている。化石胚が極小サイズであることと、種子全体のサイズが小さいことで決まる栄養貯蔵組織の量の少なさは、初期の被子植物の多くが撹乱の起こりがちな生息環境の日和見的な初期の連続的定着者であったという解釈とも一致する。

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