タンパク質設計:閉じた構造を持つαヘリックス縦列反復構造型タンパク質の合理的設計
Nature 528, 7583 doi: 10.1038/nature16191
縦列反復構造型タンパク質は、タンパク質の配列や構造のモジュール型単位の繰り返しによって構成され、巨大分子の結合ドメイン、足場ドメインや酵素として、また繊維状物質が集合する際の構成要素として、重要な生物学的役割を果たしている。反復構造型タンパク質にはモジュール性があるために、単純な構成単位の重複や組換えによって、広い結合表面を速やかに作ったり、多様化させたりすることができる。縦列反復構造型タンパク質の全体構造(これは反復構成要素の内部形状と局所的な詰め込みによって決まる)は非常に多様であって、ペプチドやDNA、RNAを結合パートナーとする長く伸びた超らせん構造から、低分子との結合や触媒作用に適した内部キャビティのある小型で閉じたコンホメーションまでさまざまである。本論文では、計算機を使って縦列反復構造型タンパク質の構造を全く新しく設計する方法の開発と検証について報告する。この設計は、反復単位間の幾何学的配置を決定する幾何学的な基準だけによって進められ、既存の反復構造型タンパク質ファミリーのアミノ酸配列や構造は参照しない。我々はこの方法を適用して、一群の閉じたαソレノイド反復構造(αトロイド構造)を設計した。これらの構造では、詰め込みの際の反復単位間の幾何学的配置に制約があって、アミノ(N)末端とカルボキシ(C)末端とが並置されるようになっている。こうして設計した構造のうちの数個については、X線結晶構造解析によって構造を確認した。縦列反復構造型タンパク質を作製する従来の方法とは異なり、今回の設計過程は天然の反復構造型タンパク質から採った鋳型配列あるいは構造情報に依存していないため、自然界で見られないような構造を作ることができる。その一例として、我々は左巻きヘリックス構造を持つ閉じたαソレノイド反復構造の設計に成功し、構造を確認した。これは、我々の知るかぎりではタンパク質構造データベースにまだ存在していない。

