Letter
太陽物理学:太陽が爆発し損ねる原因としての動的な磁場張力
Nature 528, 7583 doi: 10.1038/nature16188
コロナ質量放出は、太陽のコロナに蓄えられている磁気エネルギーが突然解放されて生じる太陽の爆発現象である。多くの場合、この磁気エネルギーは、磁束ロープと呼ばれる、長寿命のアーチ型構造に蓄えられている。磁束ロープが不安定になると、爆発してコロナ質量放出を生じるか、爆発し損ねて崩壊し、太陽に戻る可能性がある。トーラス不安定と呼ばれる磁気流体力学的な力の不均衡によって特定の事象の結果が決まるというのが、一般的な考え方である。しかし、トーラス不安定な磁束ロープが時々爆発し損ねることを示す観測によって、この考え方に疑問が投げ掛けられている。この矛盾は、コロナの磁場を測定した結果がなく、理想的な数値モデルに限界があるため、今も解決されていない。本論文では、実験室での実験結果から、トーラス不安定な磁束ロープがそれ以下では爆発し損ねる、これまで知られていなかった爆発の基準を明らかにする。ガイド磁場(磁束ロープに沿ってトロイダル状に走る周囲磁場)が十分に強くて磁束ロープのねじれを防ぐとき、そうした「爆発し損ねるトーラス」現象が発生することが見いだされた。こうした条件下では、ガイド磁場は、磁束ロープ内の電流と相互作用して、動的なトロイダル磁場の張力を生成し、爆発を止める。この磁気張力は、既存の爆発モデルには欠けており、このことが、爆発し損ねるトーラス現象をそうしたモデルが説明したり予測したりすることができない理由である。

