核物理学:ab initio アルファ–アルファ散乱
Nature 528, 7580 doi: 10.1038/nature16067
アルファ粒子(4He)の散乱、トリプルアルファ反応、アルファ捕獲などの過程は、恒星内元素合成において重要な役割を果たしている。特に、炭素のアルファ捕獲は、ヘリウム燃焼時の炭素/酸素比を左右し、続いて起こる炭素、ネオン、酸素、ケイ素の燃焼段階に影響を及ぼす。さらに、降着を受けている炭素酸素白色矮星では炭素爆発が起こるので、炭素のアルファ捕獲は熱核反応型(Ia型)超新星のモデルにも大きな影響を及ぼす。こうした反応において、アルファ粒子やアルファ粒子様の核(偶数かつ同数個の陽子と中性子を持つ核)の弾性散乱の正確な計算は、背景散乱と共鳴散乱の寄与を理解する上で重要である。これまで、アルファ粒子やアルファ粒子様の核が関与する過程の第一原理計算は、粒子数とともに演算数が指数関数的に増加するため、現実的ではなかった。今回我々は、格子モンテカルロシミュレーションを用いたアルファ–アルファ散乱のab initio計算について報告する。我々は、格子有効場理論を用いて陽子と中性子の低エネルギー相互作用を記述し、「断熱射影法(adiabatic projection method)」と呼ばれる手法を適用して8体系を2クラスター系に縮小している。また、計算効率と、系のサイズに対する補助場モンテカルロシミュレーションのより好ましいスケーリングを活用して、2クラスターについてab initio有効ハミルトニアンを計算している。我々は、s波散乱とd波散乱に関して、格子の結果と実験的な位相シフトの一致が期待できることを見いだした。演算は粒子数に対してほぼ二次のスケーリングを示すことから、アルファ散乱や、炭素と酸素のアルファ捕獲の計算が近い将来可能になると示唆される。今回の方法は、極低温原子の少数多体系だけでなく、格子量子色力学を用いたクォークとグルーオンの相互作用を記述するハドロン系にも適用できる。

