がん:膵がんにおいて上皮間葉転換は転移に必要ではないが化学療法耐性を誘導する
Nature 527, 7579 doi: 10.1038/nature16064
膵管腺がん(PDAC)と診断されると、現在の最良の治療法をもってしても、その予後の見通しは暗い。従って、新しい治療戦略が早急に必要とされている。多数の研究から、上皮間葉転換(EMT)が、がん細胞の初期段階の播種に寄与していること、そしてPDACの浸潤や転移に重要であることが示唆されている。EMTは、細胞培養条件では上皮細胞の間葉様細胞への表現型の転換が関与するが、in vivoでの上皮細胞のそのような明確な間葉転換(および紡錘形の細胞形態)はまれで、腫瘍で擬似間葉表現型が時折観察される程度である(部分的EMT)。腫瘍におけるEMTの機能的役割を調べた研究の多くが、Twist、Snail、Zeb1などのEMTを誘導する転写因子が関与する細胞培養系での機能獲得および機能喪失の誘導実験に基づいている。従って、浸潤や転移へのEMTの機能的関与についてはよく分かっておらず、また、原因との関連性を明らかにするための遺伝子改変マウスモデルはない。今回我々は、EMTを引き起こす2つの重要な転写因子であるSnailあるいはTwistを欠失させたPDACマウスモデルを作製し、PDACにおけるEMTの役割を機能的に調べた。原発腫瘍でEMTを抑制しても、浸潤性PDAC、全身性播種あるいは転移の出現に変化は見られなかった。EMTを抑制すると、がん細胞増殖が増加して腫瘍でのヌクレオシド輸送体の発現上昇が起こり、マウスのゲムシタビン投与への感受性が高まって全体的生存期間が延長する。以上より、SnailあるいはTwistによって誘導されたEMTが浸潤や転移の速度を制限しているのではないことが示唆されるが、膵がんの治療にはEMT抑制と化学療法の併用が重要であることがはっきりと示された。

