Letter

古生態学:前期新石器時代の農耕民によるミツバチの広範な利用

Nature 527, 7577 doi: 10.1038/nature15757

セイヨウミツバチ(Apis mellifera)の個体群は現代の殺虫剤や寄生生物、捕食者、病害による脅威から圧力を受けており、そのため、この昆虫の経済的重要性や世界中の農業社会で果たしている極めて重要な役割についての認識が高まっている。しかし、古代エジプトの古王国時代(紀元前2400年頃)のものとされるミツバチの図像が広く存在することからも分かるように、人類とセイヨウミツバチの関係は産業革命後の農業よりも前から存在していた。石器時代の人々がミツバチの生産物を収穫していたことを示唆する証拠も存在し、例えば、完新世の先史時代遺跡の岩絵からは採蜜が行われたことが読み取れ、また、農耕民が現れる以前の遺跡で蜜蝋が見つかった例もある。しかし、セイヨウミツバチと農耕民の恒常的な関係がいつどこで始まったのかはよく分かっていない。セイヨウミツバチの主要な生産物の1つに蜜蝋があり、これはn-アルカン、n-アルカン酸および脂肪酸アシルワックスエステルを含む複雑な脂質群からなっている。この組成は、セイヨウミツバチの生化学的特性によって遺伝的に決定されるため、高度に安定している。従って、蜜蝋の化学的な「指紋」は、考古学遺跡に保存された有機残渣からこの生産物を検出するための信頼できる基盤情報となる。我々は現在これを利用して、人類によるセイヨウミツバチの利用を時間的・空間的に追跡している。本論文では、新石器時代の旧世界農耕民の土器に残存する脂質残渣から蜜蝋が確実に検出されたことを示す。ミツバチ生産物の利用の地理的分布は新石器時代のヨーロッパ、近東および北アフリカに認められ、先史時代のミツバチの古生態学的分布域が明らかになった。時間的には、ミツバチ生産物の利用が遅くとも紀元前7千年紀(較正年代)から恒常的に行われていたことは明らかで、おそらく一部の地域では大規模であったと考えられる。また、ミツバチ生産物が技術的、文化的にさまざまな機能を果たしていた可能性が高い。セイヨウミツバチと新石器時代の農耕社会との密接な関係は農耕開始の初期までさかのぼり、これによって1つの飼養化過程の始まりを示す証拠が得られる可能性もある。

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