構造生物学:TETが仲介する酸化反応の基質選好性についての構造的考察
Nature 527, 7576 doi: 10.1038/nature15713
DNAメチル化は重要なエピジェネティック修飾の1つである。TET(ten-eleven translocation)タンパク質は、5-メチルシトシン(5mC)を5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)へ、次いで5-ホルミルシトシン(5fC)へ、さらに5-カルボキシルシトシン(5caC)へと繰り返し酸化することにより、DNAの脱メチル化に関与している。今回我々は、ヒトTET1とTET2が基質の5mC-DNAに対して、5hmC/5fC-DNAよりも高い反応性を持つことを示す。我々は、TET2–5hmC-DNA複合体、TET2–5fC-DNA複合体の結晶構造を、それぞれ1.80 Å、1.97 Åの分解能で決定した。5hmC/5fCのシトシン部分は、TET2–5mC-DNA構造中の5mCと同じようなやり方でTET2により特異的に認識され、5mC/5hmC/5fCのピリミジン塩基は触媒キャビティー内部でほぼ同一のコンホメーションを採っている。しかし、5hmCのヒドロキシル基と5fCのカルボニル基は逆の方向を向いていて、それは5hmCのヒドロキシメチル基と5fCのホルミル基が、それぞれNOG(N-オキサリルグリシン)の1-カルボン酸、シトシンの環外窒素N4と水素結合を形成して、動きが制限されたコンホメーションを採っているためである。生化学的解析により、TET2の基質選好性は、TET2が仲介する酸化反応での水素引き抜きの効率の違いによるものであることが示された。触媒キャビティー内で5hmCと5fCが動きにくいコンホメーションを採っていることが、引き抜かれる水素が引き抜きに適した方向を採るのを妨げていて、それが触媒効率の低さにつながっているのかもしれない。これらの知見は、TET2の基質選好性をもたらすのが、その基質の5mC誘導体部分に内在する性質であることを示しており、5hmCは比較的安定で、TETタンパク質によるさらなる酸化を受けにくいことを示唆している。従って、TETタンパク質は、5hmCに対する反応性が低くなっており、調節機能のための安定した標識になると思われる5hmCの生成を促進するように進化上調整されてきたのだろう。

