神経科学:双極性障害患者由来の過興奮性ニューロンではリチウムに対する応答が異なる
Nature 527, 7576 doi: 10.1038/nature15526
双極性障害は、躁病とうつ病のエピソードが間欠的に出現することを特徴とする複雑な神経精神疾患で、治療しなければ15%の患者は自殺する。そのため双極性障害は、世界保健機関により病的状態および生産性損失の最上位に位置付けられる疾患である。これまでの神経病理学的研究から、双極性障害の患者あるいは動物モデルの脳で一連の変化が明らかになっている。例えば、患者の前頭前野のグリア細胞数の減少、プロテインキナーゼAおよびC経路の活性亢進、神経伝達の変化などである。しかし、双極性障害でのこれらの変化の役割や原因は複雑すぎて、この疾患の病理を正確に決定することができない。その上、理由は分からないが、リチウムによる治療で顕著な改善が見られる患者もいれば、それに抵抗性を示す患者もいる。従って、双極性障害の正確で強力な生物学的モデルを開発するのはこれまで難しかった。誘導多能性幹細胞(iPSC)技術の導入が新しい手法をもたらした。今回我々は、ヒト双極性障害のiPSCモデルを開発し、双極性障害患者由来のiPSCから得られた海馬歯状回様ニューロンの細胞表現型を調べた。RNA塩基配列解読による発現プロファイリングに基づき、ミトコンドリアアッセイによって、双極性障害患者由来の若いニューロンでミトコンドリアの異常を検出した。さらに、パッチクランプ記録法と細胞体Ca2+画像化法の両方を用いて、過剰に活性化した活動電位発火を観察した。このような双極性障害の若いニューロンの過興奮性表現型は、リチウムによる治療に応答した患者由来のニューロンでのみ、リチウム投与により選択的に回復した。従って、過興奮性は双極性障害の早期のエンドフェノタイプの1つであり、今回の双極性障害のiPSCモデルは、臨床治療を目的とした新しい治療法や薬剤の開発に有用であるかもしれない。

