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ウイルス学:C型インフルエンザウイルスに由来するRNA依存性RNAポリメラーゼの結晶構造

Nature 527, 7576 doi: 10.1038/nature15525

インフルエンザウイルスのようなマイナス鎖RNAウイルスは、ウイルスRNAゲノムの転写と複製の両方を行うことができる大型で複数のドメインからなるRNA依存性RNAポリメラーゼをコードしている。インフルエンザウイルスでは、このようなポリメラーゼ(FulPol)は、PB1とPB2、それにPA/P3の3つのポリペプチド鎖から構成されている。PB1にはポリメラーゼの活性部位がある一方、PB2にはキャップ結合部位、PA/P3にはエンドヌクレアーゼドメインがあって、これらはキャップスナッチングによる転写開始に必要とされる。複製はde novoに開始され、相補的RNA中間体が関与している。A型およびB型インフルエンザウイルスのポリメラーゼの現在得られている構造には、プロモーターRNA(ウイルスゲノムセグメントの5′および3′末端)が含まれており、転写開始前のFluPolの状態が明らかにされている。今回我々は、C型インフルエンザウイルス由来のアポFluPolの、X線結晶学の手法により分解能3.9 Åで得られた構造を報告し、新たな「閉じた」コンホメーションを明らかにする。このアポFluPolは、中心にあるPB1は一方の面がPB2に覆われ、P3の2つの球形ドメイン間に挟まれるというコンパクトな粒子を形成している。この構造が、プロモーターと結合したFluPolのそれと大幅に異なっていることは注目すべきである。P3のエンドヌクレアーゼドメインと、PB2のカルボキシ末端側の3分の2内にあるドメインは、配置が完全に変更されている。キャップ結合部位はPB2により塞がれ、その結果、転写開始とは相いれないコンホメーションとなっている。従って、今回得られた構造は、閉じて転写活性化前状態のFluPolを捉えたものである。これは、感染細胞内で新たに合成されたアポFluPolの構造を明らかにしているが、転写を行っていないリボ核タンパク質複合体中にあるFluPolにもこの構造が適用できるかもしれない。アポFluPol構造とプロモーターに結合したFluPolの構造との比較から、FluPol活性化機構が考えられる。この研究は、インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼの顕著な適応性を明らかにしており、これは転写やゲノム複製を制御している機構の解明に役立つだろう。

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