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神経疾患:脳弓への深部刺激はレット症候群マウスの海馬記憶を救済する

Nature 526, 7573 doi: 10.1038/nature15694

脳深部刺激(DBS)は、運動の制御が損なわれる疾患の多くの患者で回復の見込みを改善してきた。そして最近では、認知機能の改善にも有望であることが明らかになっている。アルツハイマー病患者および記憶喪失ラットでのいくつかの研究では、海馬采–脳弓(海馬の活動を調節していると思われる領域)を標的にしたDBSによって、海馬に依存した記憶の異常が緩和できることが実証されている。このように有望な結果が出ているものの、小児の知的障害でもDBSによって認知機能を改善できるかどうかは全く検証されていない。このような疾患は差し迫った問題であり、知的障害は人口の3%にも上り、異なる何百個もの遺伝子が関係している。我々は、このような難治性の疾患の治療法としては、分子の存在量を個々に調節しようと試みるよりも、学習と記憶の基盤となる神経回路を刺激する方が有望な方法になるかもしれないと考えた。そこで、詳しく性質の分かっているレット症候群(RTT)のマウスモデルを使って、脳弓へのDBSの効果を調べた。RTTは女性の知的障害の主な原因の1つである。RTTはMeCP2の機能を損なう変異によって起こり、ヒトでは生後2年までに症状が現れ、数々の神経学的特徴とともに、認知、運動、社会的スキルの重度な障害が起こる。この疾患の表現型を幅広く再現したRTTマウスでも、海馬依存的な学習と記憶、および海馬のシナプス可塑性に明らかな異常が認められる。今回我々は、RTTマウスの脳弓へのDBSにより、空間的な学習と記憶だけでなく文脈性恐怖記憶も救済されることを明らかにした。同時に、脳弓へのDBSによってin vivoでの海馬の長期増強とニューロン新生も回復した。これらの結果は、脳弓へのDBSがRTTの認知機能障害を緩和する可能性を示唆している。

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