遺伝学:ミトコンドリアDNA疾患患者由来の多能性細胞における代謝の救済
Nature 524, 7564 doi: 10.1038/nature14546
ミトコンドリアは酸化的リン酸化によるエネルギー産生に主要な役割を担っており、この過程はミトコンドリア(mt)DNAにコードされた重要な遺伝子の発現に依存している。mtDNAの変異は致命的疾患あるいは重篤な消耗性疾患を引き起こすことがあり、治療の選択肢は限られている。臨床症状は、変異のタイプとヘテロプラスミー(各細胞内での変異型mtDNAと野生型mtDNAの相対的レベル)によって多様である。本研究では、mtDNA疾患の患者に由来する遺伝的に修正した多能性幹細胞(PSC)を作製した。MELAS(mitochondrial encephalomyopathy and stroke-like episodes)の原因となる3243A > G変異や、リー症候群(Leigh syndrome)に関与するとされている8993T > G変異や13513G > A変異など、一般的なヘテロプラスミー変異を持つ患者に由来する、複数の誘導多能性幹(iPS)細胞株を作製した。増殖する繊維芽細胞でのヘテロプラスミーmtDNAの自然分離によって、野生型mtDNAか変異型mtDNAのどちらかのみを含む、MELASとリー症候群の同質遺伝子系統のiPS細胞が生じた。さらに、体細胞核移植(SCNT)により、ホモプラスミーの8993T > G変異型繊維芽細胞の変異型mtDNAを置換して、修正したLeigh-NT1 PSCを作製することができた。Leigh-NT1 PSCは、ドナー卵母細胞の野生型mtDNA(ヒトハプロタイプD4a)を持ち、これは全部で47か所の塩基でリー症候群患者のハプロタイプ(F1a)とは異なるが、Leigh-NT1細胞は野生型mtDNAを持つ胚由来のPSCと類似したトランスクリプトームプロファイルを示し、正常な核とミトコンドリアの相互作用が示唆された。さらに、遺伝的に救済された患者由来PSCは、変異細胞で酸素消費とATP産生の障害が見られるのと比較して、正常な代謝機能を示した。個々のiPS細胞株でのヘテロプラスミーmtDNAの自然分離またはホモプラスミーmtDNA疾患におけるSCNTによるミトコンドリアの置換を介するどちらの再プログラム化手法も、野生型mtDNAのみを含むPSCを導出する補完戦略となると我々は結論する。

