視覚障害:ラノステロールは白内障でのタンパク質凝集を解消する
Nature 523, 7562 doi: 10.1038/nature14650
ヒトの水晶体は主としてクリスタリンタンパク質群からなり、このタンパク質が集合して、水晶体の透明性と屈折率に不可欠な高度に秩序立った巨大構造を相互作用によって作っている。タンパク質内、あるいはタンパク質間の相互作用が少しでも破壊されると、この精巧な構造が変化して疎水性表面が露出し、その結果タンパク質が凝集して白内障が発症する。白内障は、世界的に最も多く見られる失明原因であり、患者数は数千万人に上る。そして、現在行われている唯一の治療法は、白濁した水晶体の外科的除去である。水晶体タンパク質の凝集を防ぎ、水晶体の透明性を維持する機序の詳細はまだほとんど解明されていない。ラノステロールは水晶体に多く含まれる両親媒性分子で、ラノステロールシンターゼ(LSS)によって、コレステロール生合成経路での重要な環化反応を介して合成される。今回我々は、広範囲にわたる先天性白内障が生じる2つの家系を調べ、2種類のホモ接合性LSSミスセンス変異(W581RとG588S)を明らかにした。これらの変異はどちらも、高度に保存されたアミノ酸残基に関わるもので、LSSの重要な触媒機能を障害する。野生型のLSSを遺伝子操作により発現させると、白内障の原因となる多様な変異型クリスタリンの細胞内凝集が起こらなくなるが、変異型LSSの発現ではこうした効果は見られない。ラノステロールの投与により、in vitro実験および細胞への導入実験の両方ですでに形成されているタンパク質凝集体が大幅に減少したが、コレステロールの投与では減少は起こらなかった。さらに、ラノステロールの投与によって、摘出したウサギ白内障水晶体でのin vitro実験では白内障の重症度が改善され、透明性が増し、イヌを使ったin vivo実験でも白内障の重症度が改善されることが明らかになった。これらの知見は、ラノステロールが水晶体タンパク質の凝集阻害に重要な分子であることを示しており、白内障の予防と治療の新しい戦略を示唆している。

