Letter
神経科学:生きた成体海馬CA1樹状突起棘の一過性
Nature 523, 7562 doi: 10.1038/nature14467
哺乳類脳の海馬は、エピソード記憶の形成に非常に重要で、成体マウスでは約3~4週間、ヒトではより長い期間、情報を一時的に保存している。神経科学者の多くは、神経シナプスが情報保存の基本的な部位だと考えているが、海馬シナプスが、この海馬依存的記憶の期間に相当する時間維持されているという直接証拠はまだない。本論文では、海馬シナプスの寿命が海馬記憶の寿命と合致するという予測を検討した。生きたマウスの海馬CA1領域に、微速度二光子内視顕微鏡法を用い、海馬錐体細胞の基底樹状突起の棘の代謝回転動態を追跡した。シナプス後構造である棘の代謝回転動態は、興奮性神経結合の代謝回転動態を反映すると考えられている。意外にも、CA1細胞の棘の代謝回転動態は、これまで新皮質で観察されていたものとは大きく異なっていた。数学モデルから、データは、平均寿命が約1~2週間の棘の単一集団の動態モデルと最もよく合致することが明らかになった。これは、この間隔の約2~3倍の時間が経過すれば、棘はほぼ100%代謝回転し、以前のシナプス結合パターンはほとんど全て消去されることを示唆している。N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体を阻害すると、新皮質では棘が安定化するが、CA1では棘の消失率が一時的に上昇して棘密度は減少する。これらの結果から、新皮質と海馬の錐体細胞では棘の調節パターンが異なることが分かり、海馬依存性記憶の一過性は海馬シナプスの代謝回転動態を直接反映したものだとする見方が、定量的に裏付けられた。

