神経変性:ヒトプリオンタンパク質の自然に生じるバリアントがプリオン病を完全に防ぐ
Nature 522, 7557 doi: 10.1038/nature14510
哺乳類のプリオンは致死的な神経変性疾患の原因となる感染性因子で、誤って折りたたまれた細胞性プリオンタンパク質(PrP)の凝集体でできている。新しいPrPバリアントであるG127Vは、クールー病(パプアニューギニアのFore族で流行した後天性プリオン病)の流行の際に進化的に正の選択を受け、ヘテロ接合の状態では病気に対する強力な防御効果をもたらすようであった。今回我々は、このバリアントが防御効果に果たす役割と、世界的に広く見られるM129VというPrP多型との相互作用を調べた。V127はM129 PRNPという対立遺伝子上にのみ限定的に見られる。ヒトPrPのバリアントと野生型の両方を発現するトランスジェニックマウスは、クールー病のプリオンと古典型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)のプリオン(この2つは非常によく似ている)に対し完全な抵抗性を示したが、バリアントCJDプリオンの場合には感染が起こり得ることが明らかになった。このバリアントCJDプリオンは、ウシ海綿状脳症プリオンに曝露されることによって生じるヒトプリオン株で、Fore族はこれに曝露されたことがない。特筆すべきことに、PrP V127だけを発現するマウスは全てのプリオン株に対して完全な抵抗性を示し、このことから、V127の防御効果は、ヘテロ接合の状態で古典型CJDとクールー病に対して相対的防御効果を示すM129Vとは、異なった分子レベルの仕組みによることが明らかになった。実際、脊椎動物の進化で不変だった1つの残基におけるこのアミノ酸1個の置換(GがVに)は、このタンパク質の欠失と同程度の防御効果を持つ。PrPのバリアントと野生型を異なった比率で発現するトランスジェニックマウスでさらに調べたところ、PrP V127はプリオンの変換に対して完全に抵抗性を示すだけではなく、投与量に依存した野生型プリオン伝達の強力な阻害剤としても働くことが示された。

