Letter
創薬:腫瘍微小環境を標的としたがん治療のためのマイクロRNAサイレンシング
Nature 518, 7537 doi: 10.1038/nature13905
マイクロRNAは短い非コードRNAで、さまざまな組織や細胞種で発現し、標的遺伝子の発現を抑制する。従って、マイクロRNAは多数の生物学的過程で重要な歯車として働き、マイクロRNAの発現異常は多くのヒト疾患と関連付けられている。oncomiRと呼ばれるマイクロRNAは、過剰発現すると、がんの発生と維持の原因となる。これらのマイクロRNAに依存する腫瘍は、oncomiR依存性(oncomiR addiction)を示すと言われている。最も効果的な抗がん治療の中には、EGFRやHER2などのがん遺伝子を標的とするものがある。同様に、アンチセンスオリゴマー(antimiR)を用いたoncomiRの抑制も、現在開発中の治療戦略である。しかし、現行のantimiR技術は、標的細胞への送達に生理学的および細胞学的な障壁があり、in vivoでの有効性が妨げられている。本研究で報告する新たなantimiR送達のプラットフォームは、酸性の腫瘍微小環境を標的とし、肝臓による全身クリアランスを回避し、非エンドサイトーシス経路を介した細胞への侵入を促進する。我々は、ペプチド核酸antimiRを低pH誘導膜貫通構造(pHLIP)と連結させることで新規の構造が形成され、この構造がリンパ腫のモデルマウスで腫瘍微小環境を標的として、固形腫瘍で見られるような酸性条件下(pH約6)で細胞膜を横断してantimiRを運搬し、miR-155 oncomiRを効果的に抑制することを明らかにした。本研究で紹介した、antimiRを抗がん剤として用いる新たなモデルは、薬剤の標的送達の分野に幅広い影響を与える可能性を持っている。

