植物科学:CO2による気孔形成制御にはカルボニックアンヒドラーゼ、EPF2と新規なプロテアーゼが関わっている
Nature 513, 7517 doi: 10.1038/nature13452
気孔の形成は、二酸化炭素レベルの上昇などの環境刺激によって調節されているが、CO2シグナルの感知や気孔形成装置へのシグナル伝達を仲介する重要な機序についてはまだ解明されていない。水分喪失にCO2取り込みを適応させるために、植物は空気に接している表皮にある気孔のガス交換用小孔の形成を調節している。大気中CO2が増加し続けるのに応じて、広範囲にわたる植物種で気孔の密度の低下が見られている。これまでに、CO2によって制御される気孔形成応答が脱制御している変異体が1つ見つかっており、このhic変異体は細胞壁のワックス生合成に欠陥がある。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の最近単離されたβ-カルボニックアンヒドラーゼ(炭酸デヒドラターゼ)二重変異体(ca1 ca4)では、CO2上昇に対する応答に逆転が見られ、CO2レベルが高くなると気孔形成が増加することを示す。我々はこの応答を仲介する機構を詳しく調べて、CO2が制御する気孔形成のカルボニックアンヒドラーゼによる調節に関わる細胞外シグナル伝達経路を明らかにした。転写産物のRNA塩基配列解析により、CO2レベルが上昇すると、野生型の葉では細胞外プロペプチドをコードする遺伝子EPIDERMAL PATTERNING FACTOR 2(EPF2)が誘導されるがEPF1は誘導されないこと、一方、ca1 ca4変異体の葉ではEPF2が誘導されないことが明らかになった。さらに、EPF2は気孔形成のCO2による制御に不可欠であることも分かった。細胞壁のプロテオーム解析とCO2に依存したトランスクリプトームの解析により、CO2によって誘導される新規な細胞外プロテアーゼCRSP(CO2 RESPONSE SECRETED PROTEASE)が、CO2が制御する気孔形成のメディエーターであることが突き止められた。これらの結果によって、大気中のCO2レベル上昇時に葉で起こる気孔形成抑制に働いている機構と遺伝子が明らかになった。その中には、カルボニックアンヒドラーゼをコードする遺伝子CA1、CA4、プロペプチドEPF2を切断する分泌性プロテアーゼCRSPが含まれ、それによって気孔形成が抑制される。この機構の解明によって、植物がCO2上昇シグナルを感知して伝達する仕組みの解明が進み、環境からの負荷が植物のガス交換を調節すると考えられる仕組みに関する今後の研究の枠組みが得られた。

