Article

遺伝学:プロモーターレベルでの哺乳類発現アトラス

Nature 507, 7493 doi: 10.1038/nature13182

哺乳類の個体を構成する数百種類の細胞の多様性、発生経路および空間的構成は、転写の調節によって制御される。本論文では、1分子レベルでのcDNA塩基配列解読(1分子CAGEシーケンス)を用いて、ヒトおよびマウスの初代培養細胞、細胞株および組織において転写開始部位(TSS)およびその発現量をマップし、ヒトの体全体にわたる哺乳類遺伝子発現についての系統的な地図を作製した。この中で、真に「ハウスキーピング」に関わっている遺伝子はわずかである一方、多くの哺乳類のプロモーターは、独立した細胞種特異的発現プロファイルを持つ数個の近接した個別のTSSで構成される複合的な領域であることを見いだした。細胞種特異的なTSSはおのおの異なる速度で進化しているが、一方、広範な組織で発現している遺伝子のプロモーターは高度に保存されている。プロモーターに基づく発現解析は、細胞の状態を規定する主要な転写因子を明らかにし、それらの転写因子と結合部位モチーフを関連付けている。同定された新規転写産物の機能は、共発現解析およびオントロジーエンリッチメント解析により予測できる。FANTOM5(functional annotation of the mammalian genome 5)プロジェクトが示した哺乳類の細胞種特異的なトランスクリプトームの包括的な発現プロファイルおよび機能アノテーションは、生物医学研究に広範囲に応用可能である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度