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神経科学:加齢とアルツハイマー病におけるRESTとストレス抵抗性
Nature 507, 7493 doi: 10.1038/nature13163
ヒトのニューロンは一生にわたって機能し続けるが、加齢中に機能を維持し神経変性を防ぐ機構は分かっていない。今回我々は、ヒトの皮質と海馬のニューロンでのREST(repressor element 1-silencing transcription factor、別名NRSF;neuron-restrictive silencer factor)の発現誘導が、正常な加齢の一般的特徴であることを示す。しかし、軽度の認知機能障害やアルツハイマー病では、RESTが失われている。クロマチン免疫沈降と大規模塩基配列解読の併用および発現解析から、RESTが細胞死とアルツハイマー病の症状を促進する遺伝子を抑制し、ストレス応答遺伝子の発現を誘導することが分かった。さらに、RESTは酸化ストレスおよびアミロイドβタンパク質毒性からニューロンを強力に保護し、マウス脳でRESTを条件的に欠失させると加齢に伴って見られるような神経変性が起こる。線虫(Caenorhabditis elegans)でのRESTの機能的オルソログであるSPR-4も酸化ストレスとアミロイドβタンパク質毒性に対する保護作用を示す。正常な老化では、RESTは細胞非自律的なWntシグナル伝達によりある程度誘導される。しかし、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レヴィ小体型認知症では、RESTは核から消失し、オートファゴソームで誤った折りたたみ方をされたタンパク質と共に存在する。また、加齢中のRESTレベルは認知機能の維持と寿命に密接に相関する。従って、RESTの活性化状態によって、加齢脳で神経変性と神経保護を識別できる可能性がある。

