神経科学:ショウジョウバエ中心複合体での特徴検出と方位同調性
Nature 503, 7475 doi: 10.1038/nature12601
昆虫を含む多くの動物は、環境中で定位を行うのに視覚的な目印を用いることが知られている。キイロキョウジョウバエ(Drosophila melanogaster)では、これまでの行動遺伝学的研究から、中心複合体と呼ばれる高次脳構造が、ハエが示す鉛直な視覚特徴への生得的応答や視覚パターンの短期・長期の記憶に必要なことが明らかになっている。しかし、ハエの中心複合体のニューロンに視覚特徴が表現されているのか、されているならどのように表現されているのかは分かっていない。今回、頭を固定された状態で歩行または飛翔するハエに二光子カルシウム画像化法を適用し、環ニューロンの視覚運動応答を調べた。このニューロンは、中心複合体ニューロンの一種で、歩行中のハエの目印を利用した空間記憶や、飛翔中のハエの視覚パターン記憶に関係するとされている。我々は、環ニューロンの樹状突起は視覚刺激に応答し、網膜再現的に配置されていることを明らかにした。環ニューロンの受容野には興奮性と抑制性両方の副領域があり、哺乳類一次視覚野の単純細胞の受容野に似ている。環ニューロンには、移動方向選択性を示す場合もある強い方位同調性があり、また、ハエの生得行動応答を誘発するものと類似した鉛直な視覚特徴への顕著な選択性も認められた。視覚応答は飛翔中には低下したが、中心複合体が体移動制御に役割を持つという仮説に反して、歩行中に変化することはなかった。総合するとこれらの結果は、環ニューロンはハエの行動と関連した環境中の視覚特徴を表現しており、中心複合体内の下流の回路が適切な運動指令を生み出せるようにしていることを示している。より広い意味においてこの研究は、視覚にガイドされた行動選択の基盤となるショウジョウバエ中心複合体内の回路演算機構の探求に道を開くものである。

