神経科学:食欲を抑制する神経回路の遺伝学的な同定
Nature 503, 7474 doi: 10.1038/nature12596
食欲の抑制は、食後に、また病気や毒物曝露後などの摂食が好ましくない際に起こる。食欲の抑制に働くとされる脳領域は傍小脳脚核であり、これは脳幹の上小脳脚を取り囲む不均質なニューロン集団である。傍小脳脚核は、食欲抑制ホルモンであるアミリンやコレシストキニンによって誘導される食欲抑制や、有毒な食物の作用を模倣する塩化リチウムや細菌感染と似た影響を及ぼすリポ多糖によって誘導される食欲抑制を仲介すると考えられている。また傍小脳脚核の過剰な活動は、食欲を促進するアグーチ関連ペプチド産生ニューロンの除去後に成体マウスで見られる飢餓の原因でもあると考えられている。しかし、摂食を調節する傍小脳脚核内のニューロンの実体は分かっておらず、機能に関係する下流の投射標的も知られていない。我々は、傍小脳脚核外側の一区画に存在するカルシトニン遺伝子関連ペプチド発現ニューロンが、扁桃体中心核の外側外包部に投射していて、食欲抑制に機能的に重要な回路を形成していることを明らかにした。遺伝学的にコードされたタンパク質を使う解剖学的、光遺伝学的、薬理遺伝学的手法を用いて、扁桃体中心核に投射するこれらのニューロンの活性化が、食欲を抑制することが実証された。これとは対照的に、これらのニューロンの抑制は、マウスが本来なら摂食をしないような状況で摂食量を増やし、アグーチ関連ペプチド産生ニューロンを除去した成体マウスでは飢餓を防止した。まとめると、我々の結果は傍小脳脚核から扁桃体中心核へ至るこの神経回路が、摂食が好ましくない状況下での食欲抑制を仲介していることを示している。この神経回路は、食欲を抑えたり増進したりするための治療介入の標的となる可能性がある。

