免疫:mTORC1は免疫シグナルと代謝プログラムを連結することによりTreg細胞機能を確立する
Nature 499, 7459 doi: 10.1038/nature12297
mTOR(mechanistic target of rapamycin)経路は、免疫シグナルや代謝に関する指示などの多様な環境情報を統合し、T細胞運命決定を方向付けている。mTORC1およびmTORC2複合体の触媒サブユニットであるmTORの活性化は、エフェクターCD4+ T細胞の適切な活性化と分化に必須のシグナルを伝達するが、制御性T細胞(Treg)画分では、Akt–mTOR経路がTreg細胞のde novo分化および集団拡大に不可欠な負の調節因子であることが広く認められている。だが、mTORシグナル伝達がTreg細胞の恒常性と機能に影響を及ぼすかどうかについてはほとんど調べられていない。今回我々は、マウスではmTORC1シグナル伝達がTreg細胞機能の重要な正の決定因子であることを示す。Treg細胞は、ナイーブT細胞に比べて定常状態でのmTORC1活性が増加している。T細胞抗原受容体(TCR)およびインターロイキン2(IL-2)を介するシグナルは、mTORC1活性化のための主要な入力情報となり、さらにTreg細胞の抑制機能のプログラミングを行う。必須構成因子であるraptorをTreg特異的に欠損させることによってmTORC1を破壊すると、in vivoでTreg細胞の抑制活性がほぼ完全に失われ、早期に致死的炎症性疾患が発症する。機序としては、raptor/mTORC1シグナル伝達はTreg細胞でコレステロールおよび脂質代謝を促進しており、その中でもメバロン酸経路は、Treg細胞増殖と抑制分子であるCTLA4とICOSの発現増加を協調させてTreg細胞の機能的適性を確立するために重要である。これに対して、mTORC1はTreg細胞でのFoxp3あるいは炎症性サイトカインの発現には直接影響しない。このことは、Treg細胞機能調節のための従来とは異なる機序を示唆している。また、mTORC1がTreg細胞機能の維持に関わっており、その一部はmTORC2経路の阻害を介していることの証拠が得られた。今回の結果は、mTORC1がTreg細胞で基本的な「可変抵抗器」として作用して、TCRとIL-2からの免疫シグナルと脂質合成経路および機能的適応とを連結していることを実証しており、免疫恒常性と寛容にTreg細胞抑制活性の代謝プログラミングが重要な役割を持つことをはっきり示している。

