物性:モアレ超格子における「ホフスタッターの蝶」とフラクタル量子ホール効果
Nature 497, 7451 doi: 10.1038/nature12186
空間的周期性を持つポテンシャル中を動く電子は、離散的なブロッホバンドからなる量子化されたエネルギースペクトルを生じる。また、二次元においては、磁場中を動く電子は、高度に縮退したランダウ準位からなる量子化されたエネルギースペクトルを生じる。二次元電子系が、磁場と周期的静電ポテンシャルの両方の影響を受けると、再帰的な自己相似エネルギースペクトルが現れる。「ホフスタッターの蝶」として知られるこの複雑なスペクトルは、量子化をもたらす2つの場に関係する特徴的長さの相互作用によるものであり、物理学の分野で発見された最初の量子フラクタルの1つである。ホフスタッターの蝶が予測されてから数十年経つが、2つの長さスケールを一致させることが難しいため、こうした効果を研究しようとする実験的試みには限りがあった。標準的な原子格子(1 nm未満の周期を持つ)の場合、それに見合った条件に達するには、実現不可能なほど巨大な磁場が必要となる。また、人工構造体(約100 nmより長い周期を持つ)の場合、対応する磁場が小さくなり過ぎるため、不規則性による影響を完全には克服できない。今回我々は、六方晶窒化ホウ素と結合した2層グラフェンにおいて形成されるモアレ超格子が、約10 nmという理想的な長さスケールの周期的変調をもたらし、フラクタルスペクトルを初めて実験的に実現できたことを示す。我々は、フラクタルギャップに伴う量子ホール効果の特徴が、2つのトポロジカル量子数で表されることを確認しており、それらが再帰構造を持つという証拠を報告する。2層グラフェンにおいてホフスタッタースペクトルを観測できたことは、フラクタル・エネルギー・ランドスケープ内で生じる現象を、内部自由度を調節できる系の上で探求できることを意味している。

